自然の中から
校長 児玉 純
早いもので、2023年も残すところあと1ヶ月になりました。2学期も5年生の稲刈りから始まり、6年生の南三陸、運動会、4年生のスタディツアー、遠足などの様々な行事が無事に終わりました。大きな事故もなく、ここまで守られてきたことに感謝したいと思います。
先日、4年生のスタディツアーに合わせて宿泊施設になっている西山研修所を訪問しました。ここは、今年度初めて利用する施設ですが、元々は徳川光圀が建立した三昧堂壇林という僧侶のための学問所(最盛期には全国から数千人の僧が集まった)だったそうです。昭和になってその跡地に茨城県立西山修養道場が建設され、平成25年に今の常陸太田市西山研修所となったそうです。有名な水戸光圀ゆかりの地としても歴史を感じますが、ここは「山寺晩鐘」と言って、水戸八景の一つにもなっています。水戸八景というのは、水戸藩第九代藩主徳川斉昭が設定したもので、8箇所を一周するとおよそ80㎞あるそうです。斉昭は、藩士たちが自然へ親しみをもち、心身の鍛練をすることを狙って、一日で一周するように命じたと言われています。歩く速度は時速4㎞といいますから、山あり谷ありの水戸領内を丸一日歩き通しだったのではないかと思います。藩政で様々な問題を処理する中で、自然に親しむ心のゆとりを与えるだけでなく体も鍛えられるような工夫をしたところに、斉昭の指導者としての才覚を感じます。書物や伝聞だけでなく、実際に自分の目で見て体で感じることによって心も体も研ぎ澄まされるものです。また、藩士一人ひとりが気持ちをリフレッシュして視野を広げることで、藩全体のモチベーションを上げることを期待したのだと思います。日本三名園の一つ、偕楽園も斉昭が造設したことを知るとその思いや願いがさらに思い浮かびます。斉昭は、家督相続の時に学者や下層の藩士たちが強く支持したともいわれ、その人となりが想像できます。
11月の中頃から、6年生との全員面談をしています。「女学院の好きなところ」という質問をすると、ほとんどの子が、「自然に恵まれた環境と礼拝」と答えます。移り変わる季節を直接見て肌で感じるとともに、祈りと讃美で始まる日々は、いつの間にか自分を愛してくださる大きな存在に気づくようになります。神様がつくられた世界を、子ども達は敏感に感じ取ります。自然を見て自然に浸るということは、人が人として生きていくためにとても大切なことだと思います。先程の徳川斉昭もそのことに気づき、大切にしたお殿様だったのではないでしょうか。
「感性は磨かなければ光らない」これは私が好きな言葉の一つです。子ども達の感性をしっかり磨いていくことができるように、これからも様々なことに取り組んでいきたいと思います。
中庭の杉の木が、今年も静かにきらめくクリスマスツリーに変身しました。小学校から高校までともに集うこの点灯式は、女学院の一員であることを改めて感じることのできる特別な時間です。これも、子ども達の感性を磨き、感情をくすぐる行事です。普段は暗くなってから点灯するので、小学生はライトの光をあまり目にすることはありませんが、学園の象徴でもあるクリスマスツリーを見ながら、静かにアドベントの時を過ごします。この時期は世界中の人がクリスマスを祝います。本当のクリスマスの意義を考え、感謝するときにしたいと思います。
イエス様の誕生を心から祝い、温かいクリスマスと新年を迎えられますようにお祈りいたします。
≪ 4年生スタディツアー 茨城県常陸太田市 ≫
11月中旬、4年生は1泊2日で茨城県にスタディツアーに行きました。今年は初めてのプログラムとして、1日目に筑波山の登山と天体観察を、2日目にかなさ笑学校で地元の方々と竹とんぼ作りとおはぎづくりをして交流をしました。
1日目。学校からバスで筑波山に向かいました。筑波山下の駐車場を降りると、茨城県の切り傷によく効くという名薬「ガマの油」に因んだ大きなガマ(蛙)がお出迎え。その脇から続く険しい階段を一歩ずつ踏みしめて登り始めました。筑波山は標高約880mの日本百名山の中で最も低い山ですが、急な階段を上り切っただけでもつらく、弱音を吐きたくなるほどでした。短い休憩をはさんだ後は、木の生い茂る道を通ります。その後は、石段が続きました。やっと半分ほど来た時にはもうすっかり汗だくです。でも、少し立ち止まるとすっと涼しい風が肌をなでました。はじめはつらさだけ感じましたが、標高が高くなるにつれて色づく木々の美しさを見、「ここに足を置くと楽に登れるよ。」と友達と助け合う中で次第につらさはたのしさへと変化しました。最も楽しかったのは、半分を超えたあたりから続く岩の道。自然がつくった巨石でできた岩のトンネルを通りました。「胎内くぐり」と名付けられた岩は、お母さんの中から出てくる赤ちゃんをイメージしていると聞いていたので、みんなで岩を出るときに「オギャー」と言いながら通りとても楽しかったです。山登りから、岩登りのようになった山頂付近で後ろを振り返ると、海のように広がる霞ケ浦が見えました。この日は雲も少なく遠くには新宿の都庁やスカイツリーも見え、筑波山から東京までの間が田畑などできれいに平地になっていました。地図と全く同じだと印象に残りました。頑張って登った後のお昼ご飯は、とてもおいしかったです。帰りはロープウェイに乗って下山しましたが、あんなにがんばって登ったのに、たったの8分で山の下まで来たのには驚きました。
夜は西山研修所で宿泊しました。外に出てみると真っ暗で虫の声がたくさん聞こえました。あいにく雲が多く星はほとんど見えませんでしたが、それでもはっきりと輝く木星の美しさに目を奪われました。
二日目、常陸太田のかなさ笑学校で地元の方々と交流をもちました。竹とんぼづくりでは遠くまで飛ばすこつとして、羽の中心をアルミホイルで覆い火で炙ることで羽を反らすことを教わりました。地元の方がお手本を見せてくださり同じようにしたつもりでしたが、焼きすぎて黒焦げになって羽が割れてしまったり思うように反らせなかったりと、加減の難しさを感じました。おはぎづくりは地元で取れた小豆や大豆を使ってあんこときなこのおはぎを作りました。両手で握ってボール型になったもち米の上に、「どっちの味にする?こっちもおいしいよ。」とたっぷりのあんこやきなこを地元の方々に乗せてもらい、もう一度ぎゅっと握っておはぎが完成しました。今すぐにも食べたかったですが、名物の常陸の秋そばを食べるために、そっと荷物にしまいました。また来年この地を訪れるのが待ち遠しくなった1泊2日でした。
≪ オール立教スイミングフェスティバル ≫
立教大学新座キャンパスにて、オール立教スイミングフェスティバルが行われました。立教小学校や中学校、高等学校、大学など、立教の関係学校が一堂に集まり、水泳を通してつながりを深めるお祭りです。本校からは、4~6年生の希望者が参加しました。
セントポールズ・アクアティックセンターの広々とした明るいプールに迎えられ、気持ちがひきしまりました。水深1.4mということに驚きながら、水泳選手になったようで、気持ちよく泳ぐことができました。いかに一分間に近いタイムで泳げるかを競う「一分間レース」では、小学生も大健闘。速さを競うだけではない種目もあり、大学生がさまざまな演出でレースを盛り上げてくれました。また、本格的な美しい泳ぎを間近で見て、圧倒される場面もありました。優しくかかわってくださるすてきな先輩たちに未来の自分たちを重ね合わせ、よい刺激を受けてとてもあたたかい気持ちになりました。このつながりを大切にしていきたいと改めて思いました。
≪ 遠足 1・2年生 平和島フィールドアスレチック ≫
晴天に恵まれたこの日、1・2年生は平和島にあるフィールドアスレチックに行きました。各学年2人の4人でグループを組み、色々なアスレチックに挑戦しました。去年行ったことのある2年生は、1年生に優しく声をかける場面がたくさんありました。「ここに、足をかけるとやりやすいよ。」「これは難しいから無理をしないでね。」「私がやって見せるから真似してみてね。」なかなか上手にできなかった1年生も2年生の声に励まされ、一生懸命にチャレンジしていました。無事に成功できると、励ましてくれた2年生に「ありがとう!」と声をかけ、うれしそうな表情。上手に教えることができた2年生も自分のことのように、1年生の成功に歓喜の声を上げていました。今回の遠足を通して、2学年の仲がさらに深まり、2年生は「お姉さん」としての自覚がさらに芽生えたことと思います。
1年生が来年、「お姉さん」として活躍する姿を見るのが今から楽しみです。
(2年生の日記より)
・ひもをひっぱってうごくのりもので、1年生が少しこわがっていたので、見本を見せてあげるとわたしよりも早くすすんでいたのでびっくりしました。
・朝おきてから、わたしは1年生の見本になれるかな?ときんちょうしていましたが、1年生に会ってパンフレットをわたすと「わたしのためにありがとうね!」と言ってくれたので心がポカポカしました。
(1年生の日記より)
・むずかしそうでおちたらこわいなあとおもっていたけれど、お姉さんたちのを見てこうやってやればおちないんだなあと思いました。
・2年生のお姉さんがやさしくて、こんど2年生になったら1年生にやさしくしてあげたいとおもいました。
≪ 遠足 3年生 昭和記念公園 ≫
これ以上ないという程の晴天に恵まれ、3年生は立川市の国営昭和記念公園に向かいました。朝から子どもたちの心は高ぶり「何して遊ぼうかなあ。」「どんな所があるのかな。」「お弁当はいつ食べられますか?」と教室でもバスでもワクワクした声があちこちから聞こえます。嬉しいことに、今回は犬も一緒の遠足です。公園入口でアイメイト協会の原さんと2頭の犬と合流し、一緒に歩き始めました。広大な芝生広場「みんなの原っぱ」に到着すると、さっそく全員でのレクリエーションです。ネイチャーゲームでは様々な種類の木の葉を集め、身近な植物の多様性や面白さに気づいていました。広い空間でのびのびと歌ったり踊ったり、時には走り回ったりしながら、友達と手を取り合って遊びに夢中になる姿は、学校で遊ぶ時にも増して、輝いて見えました。ゆったりとした時間があるからこそ、普段以上の交流を深めることができました。次に向かうのは、大型遊具が点在する魅力的なエリア「こどもの森」です。まずは大きなピラミッドに見守られる広場で、お待ちかねのお弁当タイムとなりました。日差しも温かさを超えて、暑いと感じる程たっぷりと降り注ぐ中、おいしいお弁当を和やかにいただきました。お腹が満たされた後は、森の中での自由な時間です。子どもたちは思い思いの冒険の地に飛び出して行きました。ふわふわの雲の海を泳いで転がって、巨大な虹のハンモックを登ったり渡ったり、体を預けて休んだり。少しの時間も惜しむように、飛び回って遊ぶ様子がとても頼もしく感じられました。帰り道には、黄金色の銀杏並木を散策した後、公園を出て帰路につきました。
さわやかな秋の風、美しく紅葉した樹木、青く澄み渡る広い空。私たちを包む自然を存分に浴びながら過ごせた一日をふり返り、そこで遊ぶ子どもたちの元気な姿も含めて、深く大きい恵みに感謝をおぼえる大切な一日となりました。