失敗はスタート

校長 児玉 純

 2学期が始まり1ヶ月が過ぎました。2学期は様々な行事があり、立教女学院小学校の子ども達はたいへん充実した時を過ごします。様々な行事を通して積み重なっていくものが、一人ひとりの経験や心の肥やしとなって子ども達の成長に大きく影響を与えます。そのためには、目の前の行事にどう向き合うか、自分の役割や責任をどう果たしていくかが重要です。楽しさや結果だけでなく、取り組む過程を大事にして、行事を作り上げていきたいと思います。

 一方、行事の多い時期だからこそ、学習への取り組みも目標を決めて計画的に取り組んでほしいです。基礎的なことを身につけ、苦手なことに挑戦することが自分の力を本物にするためには必要です。
 行事でも学習でも、「やってみる、挑戦する」ということにおじけづいてしまう子どもは、結構多いです。間違うことや失敗することへの恐れがあるからです。以前、教育関係の新聞を読んでいたら、「誤答から考える」というタイトルの記事がありました。間違えないように、一生懸命考えたのに間違ってしまったときはがっかりしてしまいますが、間違ったところから考えを深めていくというやり方も有効な学習方法です。科学の世界では、大きな発見は、何百という失敗した実験から生まれると言われます。理科の授業でも、実験で予想通りの結果が出ると嬉しいのですが、失敗しないように指導者が条件を整え過ぎてしまうと、本当の実験の意味やおもしろさが理解できずに素通りしてしまうことがあります。実験を成功させる努力と同様に、失敗した実験の意味を考えることが重要だということです。間違いや失敗からは、時には成功することよりも多くのことが学べるし、成長するきっかけになります。

 しかしながら、失敗すること……これは、大人も子どももあまり好きではないと思います。その結果、私たち大人は、「子どもが失敗しないように」ということを強く願ってしまい、お膳立てをし過ぎて、子どもたちが経験すべき貴重な機会を奪ってしまうことがあります。
 子どもが失敗を受け入れるには、「失敗しても大丈夫なんだ。」と思える環境が必要です。失敗が嫌な思い出、トラウマにならずに次へのステップだと考えられる安心できる環境です。「安心できる環境」とは、失敗しても責められず、やり直しする時に支えてくれる友達や先生や保護者が周りにいるということです。学校では、「教室は間違える場所だよ。」と、子ども達によく話をしています。失敗を認めるということはなかなか勇気がいることです。これからも、安心して失敗できる教室、安心して失敗できる学校になるように取り組んでいきたいと思います。ご家庭でも、子どもが失敗したときに、「いい経験したね。」と、背中を後押ししていただけたら幸いです。

≪ 4年生 社会科見学 ≫

 9月15日、4年生は「ごみ」をテーマに社会科見学に行きました。日々の生活で捨てたごみのゆくえを追うためです。事前に調べてみると、ごみのゆくえについて、わからないことが次々に出てきました。たくさんの疑問を持って、見学へ行きました。
 まずは、真っ青なごみ収集車に紛れて有明清掃工場に行きました。可燃ごみを集めて清掃工場へ運ぶ収集車には2種類あることも初めて知りました。ゴミバンカーに溜められた大量のごみは、UFO キャッチャーのようにクレーンで焼却炉に運び込まれました。「Toy storyでみたのと似てる。でも、これが全部ごみだなんて……」「1日に1200tも燃やしてるなんて、すごい量!」と驚いていました。清掃工場にある高い煙突は、時計の役割をしていることを知り、環境だけでなく人々の暮らしやすさにも配慮されていることも学びました。
 夢の島熱帯植物館の館内は、滝が流れ、まるで熱帯雨林のようでした。バナナやココナッツもあり、とても蒸し暑かったです。不思議なドーム型の建物内にはボイラーの管が張り巡らされていました。「ごみを燃やした熱で、こんなにたくさんの大きな植物が育つなんて。」と、ごみの量の多さを体感したようです。
 最後に、中央防波堤埋立処分場に行きました。東京湾につくられた最後の埋立処分場です。あと50年でいっぱいになると聞いて、「ごみを出さない生活はできないから、今からもっと気を付けなくてはいけないね。」とつぶやく姿がありました。実際に埋立処分場の中にも入り、サンドイッチ工法で埋め立てられた山の斜面を目にしました。予想していたよりも臭いもせず、飛行場やディズニーランドが望めることにおどろいていました。
 「私たちの生活」と「環境を守ること」を両立させる難しさを学んだ社会科見学。些細なことでも、多くの人がごみの問題を意識すれば、大きな変化につながります。見学を通じて、一人ひとりが考えるきっかけになったようです。未来の担い手たちを見ながら、問題とされているごみの現状を変えることができるのではないかと、期待せずにはいられない時間となりました。

≪ 5年生スタディツアー 茨城県常陸太田市金砂郷 ≫

 金砂の方の「この田んぼの色は、何色っていうか知ってるかい。」という問いかけに目を上げると、黄金色に輝く稲穂が広がり歓声が上がりました。今年は太陽の光をよく浴びて、稲のできがよかったとのこと。かまで手刈りする人、束ねた稲を運ぶ人、それをおだがけ(竿に稲を干すこと)する人、バインダーでどんどん刈る人に分かれて作業を2時間ほど続けました。2日目は、ぶどう農園でのぶどう狩り体験をしました。「おなじ品種でも、作り手によって味の違いがある」とぶどう作りに誇りをもっておられるぶどう農園の方から、栽培の苦労や工夫をうかがいました。私たちの「食」を支えるお仕事に携わっている方が、愛情をもって作物を育てていることを知ることができ、子どもたちの心にもたくさんの種が蒔かれたスタディツアーでした。

日記より

・手刈りが一番楽しかったです。ザクッザクッと切れるのですっきりします。ジリジリと日が照りつけていてものすごく暑かったけれど、熱中してしまいました。
・田んぼの泥に足がはまってしまう人が続出。私の足もぬけなくなり、動くとどんどんしずんでいきます。友達と金砂の方が引き上げてくれました。
・稲を刈る時、金砂の方がシャッシャッシャッと3回軽くやっていましたが、私が実際やってみるとすごく硬くてゴキゴキゴキとやっと切れるくらいでした。
・稲刈りはとても大変で、「これからは、ご飯を残さず食べよう。」と思いました。
・「常陸青龍」というめずらしいぶどうをとりました。黄色い方がおいしいと聞き、黄色いぶどうを探しました。試食したらさっぱりしていて私は一番気に入りました。シャインマスカットは、とっても甘くてまるであめを食べているようでした。

≪ 6年生スタディツアー 宮城県南三陸町 ≫

 東日本大震災から12年。6年生は、まだ生まれていませんでした。12年前にどんなことがあったのだろうと想像し、また、南三陸の方々が今日までどのように歩んできたかを、自分の目で見て、耳で聞き、心で感じ、そしてよく考えた3日間となりました。南三陸を訪れたからこそ、わかったことや感じたことがありました。
 旧石巻市立大川小学校を訪れ、語り部の方にお話を伺いました。ご自身の悲しい体験は、思い出したくないだろうに、それでも私たちに同じ悲しみを味わってほしくないという強い思いから話してくださったことの意味をしっかりと受け止めました。「自分の命は自分で守る。命さえあれば、また会える。」というメッセージが心に突き刺さりました。南三陸311メモリアルでは、震災についての様々な事例を周りにいる人と話し合う中で、他人ごとではなく自分ごととして考えていくプログラムを体験しました。思いを寄せて心が苦しくなる場面も経験しながら、これから自分がどうしたらいいかを静かに考える時となりました。
 様々な活動を通して、南三陸の自然の豊かさ、自然がもたらす恵みのすばらしさを体験しました。ワカメの養殖漁用の漁船に乗り、波が穏やかな海に包まれました。風が心地よく、海の魅力を堪能しました。ワカメを使ったふりかけづくりでは、「こんなにおいしいふりかけは初めて!」と、目をきらきらとさせていました。りんご農園では、自分で収穫したてのりんごを丸かじり。初めての経験で、「どのりんごも全部おいしい!」と、新鮮なりんごのみずみずしさに感動していました。ここに書ききれないほど多くの体験は、どれもとても楽しく、南三陸の魅力を存分に感じ、南三陸のことが大好きになりました。また、優しく教えていただいたりおしゃべりを楽しんだりする中で、南三陸で出会った方々のことも大好きになりました。お話の中で、「震災後、こわくて海に近づけなくなった。」ということや、「海にはいろいろな顔がある。穏やかな海と津波の海は、同じ海。」であることを伺いました。それでも、自然と共に、海と共に生きていくことを決意したという言葉からは、明るく前に進んでいこうとする強いエネルギーを感じました。 
 南三陸で出会う方々は、本当に優しく、そして心の強さを感じさせられます。震災を通して、大きな悲しみを抱えつつも、前向きに生きることを大切にしておられます。復興への歩みの中では、町の絆が欠かせないものであったことを実感しました。両手を広げて「南三陸へようこそ!」と、私たちをあたたかく迎えいれてくださったことに感謝の気持ちでいっぱいです。また、その大きな優しさが、子どもたちの心にも深く残りました。わかろうとすることの大切さ、あきらめずに考え続けること、私たちにできることは何だろうか、問い続ける日々の始まりとなりました。

≪ 第46回 私学水泳記録会 ≫

 9月3日(日)に学習院初等科のプールをお借りして、第46回水泳記録会が行われました。新型コロナウイルス感染症の影響により、開催は実に4年ぶりとなります。当日は都内の私立小学校6校が集まり、男女合わせて70名の児童が参加しました。本校からは7月末に行われた選考会を経て、学校代表として5年生3名、6年生5名の計8名が出場。自己記録の更新を目指して一生懸命泳ぎました。多くの選手は選考会や練習時よりも良いタイムを出すことができ、この結果を自信にして欲しいと思います。他校の上手な選手の泳ぎを間近で見ることができ、大いに刺激を受けた1日となりました。