狭き門をくぐれ

教頭 上川 恵

 どちらかを選ばなければならない時、私たちは自分自身の意思で判断し、決定しているだろうか?
 その物事の重さにもよりますが、子どもの頃はよく「どちらにしようかな、天の神様の……」の遊びうたを使ったり、くじ引きやジャンケンをしたり、運に任せる決め方を多用していた人が多いのではないでしょうか。大人になるにつれ、占いのラッキーカラーなど、何かにすがって決めることもあるかも知れません。どちらでもいいと言った気持ちの時は、「残り物には福がある」と言うことわざを言い訳にして、選ぶと言う行為を放棄することもあるかもしれません。私たちは多くの場合、失敗したくない、損をしたくない、しんどいことは避けたい、と考えてしまいがちです。最近では「口コミ」などを参考に、他人が良いと評価している方を「無難な選択」として選んでしまうことがあります。もし失敗しても、「みんながそれを選んでいたから」「みんなが良いと言っていたから」と、輪郭のぼやけた「みんな」を、あたかもはっきりと実在しているかのように表現し、誰かのせいにしたり、大勢で痛み分けすることで自分一人の苦痛を軽減したりすることを無意識に行っていることがあります。
 マタイによる福音書7章13節~14節には、「狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は広く、その道も広々として、そこから入る者が多い。しかし、命に通じる門は何と狭く、その道も細い事か。それを見出す者は少ない。」とあります。滅びに通じる門は広く、道も広々としていて入りやすいので、誰もがそこから入っていこうとします。大概そちらの方は居心地が良さそうで華やかで、大勢の人と一緒なので安心です。一方で、命に通じる門は狭く、道も細いので、誰も入って行こうとせず、それ故目立たず、華やかさに欠け、仲間もいないので心細い印象があります。
 ここで言う滅びとは、神の教えを無視し、自分勝手に生きる事。命とは、神さまが良しとされる生き方。と私は解釈しました。聖書は、たとえ困難で魅力的に見えなかったとしても、自分の命を生かす道を、自分で考え選び取るように、と教えてくれているように思います。
 子どものうちはやり直しが効きます。たとえ、選択を間違えたとしても、それが経験という踏み台になり、次のチャンスへと繋がります。一方親は、「失敗させたくない」「苦労させたくない」と言う思いが勝って、子どもが考える前に答えを示してしまったり、せっかく子どもが出した答えを、簡単に否定してしまったりします。
 6年生は、最後の保健の授業で、上田亜樹子司祭(元立教女学院チャプレン)を招いて「命」について考える特別授業をしていただきました。神様から与えられた命を、親が大切に育んでくれた命を、尊いものとして大切にしていこう。そんなメッセージをいただきました。そして新しい道へと歩み出す6年生へ、聖書の言葉をくださいました。それが先ほどの聖書箇所です。
 桜は、冬の寒さに一定期間さらされることで、休眠から覚め、開花へとつながる仕組みだそうです。子どもたちは、時に冬の寒さに耐えるが如く、我慢が必要な事もあるでしょう。良い事ばかりではありません。しかし、その道が未来に咲く桜へとつながるのだとしたら、どうか今歩もうとしているその道を信じて、進んで欲しいと思います。大人はその背中を愛おしく見守っていきましょう。
 春、子どもたち一人ひとりの心に、桜の花が咲きますように。

≪ 6年生ありがとう!≫

 初めての学校生活にドキドキしていた1年生にとって、やさしいお姉さんとの出会いは、どれほど心強かったことでしょう。手をつないで出かけた歓迎遠足。お姉さんの温かい手のぬくもりにとても安心した1年生。本当のお姉さんができたようで、それからというもの、学校の休み時間に会えるのがうれしくて仕方なかったです。お姉さんが作ってくれた英語のネームプレートをつけると、不思議なくらい、心が弾みました。お姉さんと過ごす時間が何よりも大好きで、イースターのお茶の会、お楽しみ給食、そして、クリスマスの祝会は、楽しみな気持ちではち切れそうでした。そんなお姉さんに何かプレゼントしたくて、3学期はクロッカスの水栽培を始めました。一生懸命にせっせとお水を替えて、早く芽が出ないかな、ちゃんと育つかな、とドキドキしながら生長を見守りました。つぼみがふくらんで花が咲きそうになると、リボンをつけてお姉さんのところへとんでいきました。お姉さんが「ありがとう!」と言ってくれて、とてもうれしかったです。2月のある日、お姉さんが教室にやってきて、本の読み聞かせをしてくれました。卒業が近くなり忙しいお姉さんと、久しぶりにゆっくりと過ごした時間は、とてもあたたかくて幸せなひとときになりました。もっと読んでほしかったなぁ、もっと一緒にいたかったなぁと心の中で思いながら、バイバイをしました。
 この1年間、元気に学校に通えたのは、お姉さんたちがいつも見守ってくれて、声をかけてくれて、励ましてくれたおかげです。大好きなお姉さん、ご卒業、おめでとうございます。とても寂しいけれど、これからもずっと、私たちの素敵なお姉さんでいてください。1年間、ありがとうございました。