より良く生きる

校長 児玉 純

 今年の軽井沢キャンプが大きな恵みと守りのうちに終わりました。参加した子ども達は、寝食を共にする同じ体験の中から、一人ひとりが違ったことを感じ取り、それぞれの成長の糧としたのではないかと思います。神様の大きな守りの中にあったこと、キャンプのための準備や帰宅後の笑顔まで用意してくださった保護者の皆様、行程の相談にのっていただき、安全な送迎をしてくださった旅行会社やバスの運転手さん、バスガイドさん、そして常に子ども達のそばにいて、子ども達をサポートし、困ったときも嬉しいときも共に心を一つにしてこのキャンプを作り上げた教職員一人ひとり(引率だけでなく、学校でのサポートメンバーを含め)に感謝したいと思います。

 最近『ウェルビーイング』という言葉をよく聞くようになりました。先日読んだ雑誌(『教育研究』4月号)には、その特集が組まれていました。『ウェルビーイング』とは、元々WHO(世界保健機関)から生まれた概念で、「心身共に、そして社会的にも満たされていて幸福である」状態をいうのだそうです。このことはOECDやG7教育大臣会合でも取り上げられています。具体的には、「協働性」「利他性」「他者への理解」「自己肯定感」「自己実現」「心身の健康」などと関連性があるそうですが、私たちは、『ウェルビーイング』な生き方をしているのでしょうか。 

 一時期、GDP(国民総生産)を向上させることが国民の幸せにつながると思われていた時期もあり、所得倍増計画などがたいへん注目をされました。「企業戦士」という少し物騒な言葉も、私はよく聞きましたが今では死語になっているのかもしれません。もちろん今でも経済的な豊かさは、幸福感の一つのファクターにはなっていますが、一方でそれほどお金持ちでなくても、自分らしく生きることを求める人が増えてきたように思います。
 先程の雑誌には一つの方向性が示されていました。それは、「ポジティブシンキング」ということです。この「ポジティブシンキング」は私もとても大切なことだと思っています。何か予想外のことが起きた時や自分の思い通りに物事が進まない時に「なんて運が悪いんだ!」と嘆くのと、「そういうこともあるんだ。じゃ、違う方法を考えてみようかな。」と考えるのでは、次のステップを踏み出す時に大きな違いがあります。前向きに考えられるというのは、「自己肯定感」や「心身の健康」に影響が出てきます。
 イエス様は、山上の説教の中で「幸い」について語られています。「心の貧しい人」「悲しむ人」「柔和な人」「義に餓え乾く人」「憐れみ深い人」「心の清い人」「平和を作り出す人」「義のために迫害される人」そして、「私のためにののしられ、迫害され、身に覚えのないことであらゆる悪口を浴びせられる」そのような人は「幸いである」のです。
 「幸福」の概念は人によって違いがあります。人は幸福を求めて彷徨いますが、物語「青い鳥」にあるように、意外に身近にあって自分ではなかなか気がつかない、いや、気づけないものなのかもしれません。私たち立教女学院小学校では、子ども達の『ウェルビーイング』につながるような活動を、これからも続けていきたいと思います。そして、青い鳥を一人ひとりがしっかり捕まえて成長できるように、ご家庭と協力していきたいと考えています。

 明日から夏休みです。それぞれのご家庭で、楽しい計画が立てられているのではないかと思います。これから始まる一か月半の夏休み、健康に安全に過ごしてほしいと思います。そして、9月には、「おはようございます!」の元気な声とたくさんの思い出をお土産に、子ども達が学校に戻ってくることを楽しみにしています。 

軽井沢キャンプ報告

3年生のキャンプ目標 キャンプ生活を「たのしみ」ましょう

 3年生にとっては初めてのキャンプ。どきどきわくわくしながら、【キャンプ生活を「たのしみ」ましょう】という目標のもと、6年生のお姉さんとの共同生活が始まりました。
 友達とずっと一緒に過ごす中でけんかをしてしまわないか、家族と離れて寂しくならないのか、という不安を抱えながらも、次々にやってくるプログラムや生活の準備などに必死に取り組み、時間が過ぎるのはあっという間でした。キャビン紹介では練習の成果を発揮して、それぞれの役割を、照れながらも一生懸命に表現していました。野外炊事では、慣れない手つきで野菜の皮をむき、薪で火をおこして……。奮闘する姿にそれぞれの成長が見られ、力強く感じました。お別れの時には、お世話になったお姉さんたちに心を込めて歌を贈り、溢れる思いに涙を流す児童もいました。体験すること全てが新鮮で、全身で充実した時間を味わい、たのしみました。多くの方に支えられたことに感謝し、自身の成長を実感することができた、実り多き3日間となりました。

~日記より~
・6年生のおかげで、この3日間をたくさん笑って過ごすことができ、前の自分よりもできることが増えました。
・一生けんめいにお米をとぎました。その結果はとてもほかほかでふわふわになり、とてもおいしかったです。

4年生のキャンプ目標 自分たちで考えて「たのしみ」を発見しましょう

 この学年だけでキャンプ生活を作りあげる、これが4年生にとって初めての大きな仕事です。「がんばろう!」と、「大丈夫かな?」が入り交じる心の内が、準備の段階からひしひしと伝わってきました。係を決める話し合いに四苦八苦したり、劇作りが上手く運ばずに焦ったりしているうちに、出発日はすぐにやって来ました。
【自分たちで考えて「たのしみ」を発見しましょう】という目標を心に置いて過ごした3日間。キャンプ全体を貫いて感じられたのは、どの子もひたすら懸命に「自分の役割を果たそう」と努力していた姿です。礼拝では心静かに式を執り行い、オリエンテーションでは、シーツのかけ方を分かりやすく説明します。自分たちで組み立てて、みんなが楽しめる時間を作ろうと一致団結したキャビン紹介や、係が中心となって配膳や片付けを行うだけでなく、たのしい時を過ごせる工夫をした毎回のお食事も、とても良い時間となりました。チームワークを発揮した野外炊事や、美しい夕暮れと夜の闇に包まれながら盛り上がったキャンプファイヤーなど、どの場面もそれぞれの働きに支えられて、充実した思い出の1ページとして重なりました。
 自分で考えることの良さと難しさ、「たのしみ」を発見するまでの道のりにある苦労、乗り越えた先に得られる喜び、などを感じ取りながら、仲間と一緒に過ごす中で、一人ひとりがキャンプの目標にたどり着いたものと思います。
 学校に帰ったとたん「早く来年のキャンプに行きたい!」と笑顔で叫んでいる子も多くいました。この3日間で少し逞しくなり、自信と意欲も一回り大きくなりました。これを今後の学校生活の中で、一つずつ結実させていきたいと思います。
~日記より~
わたしは今回のキャンプで、小さな火みたいなつながりが、中火・強火とどんどん大きくなって、きずなが深くなっているのがわかりました。

5年生のキャンプ目標 「たのしみ」を創りだしましょう

【「たのしみ」を創りだしましょう】というキャンプ目標に向かって、どうしたら自分だけではなく、みんながたのしめるのか考えながら、出発前からそれぞれの係やキャビンで張り切って準備をしている姿がありました。
 初日のキャビンピックや、3日目のキャンプファイヤーなどのレクリエーションでは5年生らしく企画から司会進行までほとんど全てを自分たちで行い、「たのしみ」を創りだすことの大変さと、たのしみを共有するすばらしさを味わうことができました。
 2日目の野外炊事では、自分たちで考えた自由献立をもとにスーパーで食材を調達しました。どちらが安いのか、価格シールとにらめっこをして、予算内で買い物をする姿は、まるで小さなお母さん。味見をしてみると「お母さんの豚汁に似ていて美味しい!」などと、仲間と喜びを分かち合う様子も見られました。
 ピッキオ野鳥の森でのナイトハイクは、都会ではなかなか味わうことのできない静寂の中、真っ暗闇の森の中を歩きます。コウモリ探知機を使って、野生のコウモリが捕食のために水面を飛び交う姿も観察できました。
 3日目の浅間山麓国際自然学校では、高原植物や地震、火山のメカニズム、プレートの種類について学びました。道中、バスの外の景色は、雲に包まれ視界は真っ白に。珍しい自然現象も体験することができました。
 3泊4日を共に過ごせば、子どもたちの間には、時として意見の相違や些細なけんかやすれ違いが生じることもあります。そのような時こそ、子どもたちは「たのしみ」を創りだすことを思い出し、お互いに声を掛け合いながら力を合わせようと努めていました。この経験が、共に生きることの楽しさ、難しさ、そして素晴らしさについて考えるきっかけとなることを願っています。日々の学校生活の中でもこの学びを生かしてほしいと思います。

6年生のキャンプ目標 「たのしみ」を人に与えましょう

 6年生の小学校最後のキャンプは、最初の2日間は3年生と一緒に、その後2日間はクラスで過ごしました。
 準備はキャンプの約1ヶ月前から始まりました。コロナの影響で3年生の時にキャンプに行っていない6年生にとって、3年生とのキャンプを想像するのはなかなか難しいものです。しかしそこは6年生。初めてキャンプに行く3年生の気持ちになって、しおりに挟むオリジナルのページの内容を考えました。軽井沢の自然や土地について紹介したものから、「魚のきれいな食べ方」「宿舎での楽しい過ごし方」など……。完成したしおりには、3年生がたのしめてキャンプ生活で生かせる内容が並びました。
 初日の夜は、少しずつ準備を重ねたキャビン紹介。大勢の人の前で発表することに緊張もありましたが、見ている人から笑い声が上がると、お互いに心が解けていくのが分かりました。2日目の野外炊事やキャンプファイヤーと、日を追うごとにお互いの距離がぐっと近づくのが分かりました。「たのしみ」を与えるためには、相手の立場に立ち心を寄せた言動が必要です。同時に全体を見渡して皆が参加できるように目を配ることも求められます。コミュニケーションを通して、視野も広がり、またひと回り大きく成長した6年生の姿が見られました。
~日記より~
キャビン紹介では時間配分がうまくいかなくて歌えないこともあったけれども、みんなが喜んでくれて、今まで準備したかいがあったと思いました。キャンプももうこれで最後かと思うと寂しいですが、自然の豊かさを感じたキャンプ生活には、目に見えない大切な宝物がたくさんあったと感じました。