エッサイの根

教頭 上川 恵

 久我山に移転して100年が経った立教女学院は、その歴史と共に木々たちも大きく成長しています。1930年頃植えられたとされる中庭のヒマラヤスギは、中央線からも見えるほどに成長し、この時期はクリスマスツリーとして鮮やかに煌めいています。1939年に杉並区から送られた50本のケヤキの苗は、並木道として行き交う児童生徒の歩みを守っていました。校舎改築と共にその形は変わりましたが、今もなお、グラウンドに残された3本と、同じ線上にあるマーガレットホール脇の数本に、その名残りが感じられます。
 人間と同じで、木も呼吸し生きています。病気になることもあるし、夏の酷暑に耐えがたい苦痛を受けています。学院内には、緑の環境を維持管理するため「樹木管理検討チーム」という部署があります。定期的な枝の剪定はもちろん、樹木の精密診断を行い、弱った樹木に必要な処置を施します。中には残念ながら伐採の決断をしなければならないものもあります。今年は、幹の空洞が大きく倒木の危険が高まった短大門の桜、ナラタケモドキに感染し枯れてしまった聖マリア礼拝堂東側のケヤキを伐採しました。年明けにはマツ材線虫病にかかってしまった松数本(あっという間に広がり伝染していきます)を伐採する予定です。
 気候変動も相まって衰弱が急速に進んでしまった木々たちに、安易に伐採の判断を下しているわけではありません。25年前の校舎改築時にも、なるべく残すという考え方で、残置、移植、伐根を慎重に検討しました。立教女学院は武蔵野の自然を残し緑豊かなキャンパスの維持に努めています。この思いは今後も変わりません。今は、植栽計画も同時に進めており、学院の未来を長く見守ってくれる新たな命を育てていこうと、検討チームで話し合っている所です。
 アドベントに入ると、朝の礼拝でイエス・キリストの系図が読まれます。イスラエル民族の始まりからダビデ王国の繁栄、その後の衰退と困難を経て現れた救い主を、アブラハムからイエスまで合わせて42代の系図で表しています。言い慣れない人物名を、練習を重ねた6年生が流暢に読んでくれます。アドベントの聖歌に「エッサイの根より」という曲があります。エッサイとはダビデ王の父の名で、旧約聖書イザヤ書が元になっています。
「エッサイの株から一つの芽が出、その根から一つの若枝が生えて実を結び、その上に主の霊がとどまる。」(イザヤ書11章1節)
 繁栄の礎となるエッサイから、衰退と困難の時代を経て救い主イエス・キリストが現れたことを、根(英語では切り株と訳されているそうです)と若枝に例えています。
 一度切られてしまった切り株から新しい新芽が生えるということは、その切り株は滅びてしまった過去のものではなく、その中に命が燻っていて、再び伸びていくための力が蓄えられたということです。切り株となってしまった学院の木々たちは、100年の月日を見守ってきた、誰よりも女学院の歩みを知る存在に違いありません。先人たちが築きあげてきたこの立教女学院を大切に守って、未来にバトンがつながることを願いつつ、2026年を迎えたいと思います。

みんなのお米づくり

 5年生の社会科では、日本の産業を中心に学習しています。その中のひとつ、「未来を支える食料生産」の単元の一環として、日本の食料生産の柱である稲作を体験的に学ぶため、5月に田植え、9月には稲刈りのスタディツアーを実施しました。収穫された約500kgのお米は、金砂のスタッフの方々により精米され、4年スタディツアーのバスにて学院まで運搬されました。もちろん、この状態で通常消費者に届くことはありません。流通過程において、多くの人の働きによって商品として加工されます。5年生は、生産者から消費者へ届くまでの「流通」の過程を実体験を通じて学ぶため、商品化する一連の作業に取り組みました。
 最初に取り組んだのは、米袋に使用するラベルデザインの決定です。児童からデザインを募集した後、投票により各クラスのラベルを選定しました。その後、有志で集まった児童が、選定されたラベルを米袋に貼り付け、袋詰めに向けた準備を完了させました。
 理科の授業時間を利用し、保護者のボランティアの方々にご協力いただき、5年生全員でお米の袋詰め作業を実施しました。食品を扱うため衛生管理を徹底し、全員が手洗い・マスクを着用して理科室に集合しました。1000gから1010gの範囲内に収めるという厳密な基準で計量し、結び目の位置にも配慮しながら、一つひとつ丁寧に作業を進めました。
 このようにして完成した「みんなのお米」は、各学年の保護者会を通じてご家庭に販売しました。また、給食では、金砂米を使った献立を企画し、全校でおいしくいただきました。 今後も、スタディツアーを通して実体験に基づく質の高い学習機会を提供していきたいと考えています。

東初協 私学体育発表会

サッカークラブ

 さわやかなお天気に恵まれ、成城学園で開催された私学体育発表会に出場しました。試合前の土曜日には、田園調布FCのコーチを招き、特別練習をして臨んだこの試合。練習してきたことを実戦で活かす日です。視野を広げて空いているスペースを見つけたり、ボールを大切に運ぶために自分の位置を考えて動いたり、1試合目から「自分たちが学んできたサッカー」をしようと全員が考えていました。どの試合でも、「練習してきたことをやる」「プレーは熱くても頭は冷静に」という意識をもって臨みました。よいプレーの結果は、得点に結びつきます。意識や得点までの過程を大事にした結果は3勝1敗、出場校の中では最高の結果を出すことができました。
 2月には4校対抗戦がひかえています。体育発表会で勝ち取った勢いにさらにはずみをつけて、チーム全員で優勝をねらいます!

バドミントンクラブ

 本校を含む8校が成蹊小学校に集まり交流をもちました。経験者の多いAリーグでは、シュッという音と共に鋭いスマッシュを打ち合う、手に汗握るような試合が多く見られました。一方、Bリーグでは、試合を通してルールを身につけ、どんどんラリーが続くようになる姿が見られました。「サーブミスしなくなったよ。」「諦めないで最後まで走ってシャトルを追いかけられるようになった。」「次に戦う時には、スマッシュがもっと決まるようにしたい。」といった声も聞かれました。数多くの試合を見て、戦ったことで、これからの目標を見つけたり、自分自身の成長に気付いたりしたようです。ペアやチームで一丸となり戦い「仲間」の絆を感じられた一日になりました。

バトン・チアクラブ

 クラブの子どもたちにとって、このような発表会で演技できる場があることは大きな励みになります。直前の練習で「手を前に出す時も、バシッとキレのある動きにしよう。」と6年生からのアドバイス。本番では笑顔が輝き、元気いっぱいの演技。最後の決めポーズで、客席から「わあ。」と歓声があがりました。今年度の参加校は11校でした。「好きなことに取り組んでいる姿」をお互いに見合うことも、よい刺激となりました。

6年 鑑賞教室

 6年生は、文化庁が主催する文化施設等活用公演として、新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートを鑑賞しました。この事業は文化施設を会場として活用することで文化芸術を鑑賞・体験することを目的としており、今回は墨田区にある、すみだトリフォニーホールに行ってきました。
 当日はチャイコフスキー作曲の『白鳥の湖』より「情景」や、『くるみ割り人形』より「花のワルツ」といったクラシック定番曲の演奏はもちろんのこと、映画『となりのトトロ』のテーマ曲「さんぽ」に合わせたオーケストラの楽器紹介など、楽器について学べる機会も多くありました。プログラム中盤ではゲストとして、雅楽演奏団体「伶楽舎」やサックス四重奏吹奏楽団「サキソフォックス」が登場し、オーケストラとコラボレーションすることで、通常のクラシックコンサートでは体験できない見所&聴き所満載の演奏も行われました。
 大ホールでのコンサートは、オーケストラの壮大で優雅な響きを感じることも、オーボエやハープの美しいソロを味わうこともでき、器楽の魅力あふれる時間となりました。

児童の感想より

・オーケストラってシーンとしてお堅いイメージだったので、雅楽と一緒に「和と洋」の不思議で魅力的な演奏をしてくれたり、サックスとのコラボではダンスしながら演奏をしてくれたり、とってもおもしろい鑑賞教室でした。
・器楽クラブでいつも自分が触っているものと同じ楽器なのに、弦楽器であんなに透き通った音が出るのかと驚いた。これから合奏をする時に、「いつかあんな風に弾きたい!」という新しい目標ができた。

心を尽くし、魂を尽くし、思いを尽くしたアドベントキャンドル

 クリスマスを迎えるにあたり、教派によって呼び方にこそ違いはありますが、クリスマスの約4週前から「アドベント(降臨節)」という期間に入ります。立教女学院小学校でもアドベントに入ると、聖マリア礼拝堂にはもみの木やリースなどが飾られ、クリスマスを待つあたたかな雰囲気に包まれます。その中でも教会らしさを感じるものが、アドベントクランツではないでしょうか。
 王冠のような燭台にアドベントキャンドルと呼ばれる4~5本のキャンドルが並び、日曜日を迎えるごとに1本ずつ火が灯されていき、クリスマスの週には全てのキャンドルに火が灯ります。アドベントキャンドルに明確な決まりはありませんが、よく見かけるのは4本のうち3本が紫、1本がピンクという配色です。小学校に赴任して最初のクリスマスを迎えるにあたり、それまで4本とも白だったものを「せっかくなら紫とピンクのキャンドルにしたい」という私自身の思いもあり、昨年から紫3本ピンク1本、そして中央に白1本という並びに変更しました。
 市販されているものを買えば終わりと思っていましたが、小学校のアドベントクランツにはまる太さのキャンドルが市販では流通しておらず、紫とピンクを諦めるという選択肢もありましたが、「無いなら作るしかない!」という、得体の知れないやる気スイッチに火が灯り、キャンドル作りがスタートしました。はじめは画用紙をくるっと巻いた型に、溶かした蝋を流し込めばすぐにできるだろうぐらいに考えていましたが、それが大きな間違いでした。蝋の温度をはじめ、様々な条件に画用紙が耐えられず、あちこちから蝋が漏れてくる始末。それでも諦めきれず、型になりそうなものを探して歩きました。そんな中で見つけたのが、トイレットペーパーの芯でした。校務の方にもご協力いただき、学院中のペーパー芯回収をしていただきました。
 材料が揃えば、作業工程はいたってシンプルです。朝の礼拝で使いかけになったロウソクを鍋で溶かし、着色料として図工で使わなくなったクレヨンの欠片を混ぜます。型の方は、トイレットペーパーの芯3個を連結し、周りをアルミホイルとガムテープでグルグル巻きにします。そこに、先ほど色付けした蝋を流し込みます。あとは固まるのを待って完成です。
 こうして、礼拝で使いかけになっていたロウソクもアドベントキャンドルへと生まれかわり、わたしたちの礼拝で活躍してくれました。今年も無事に4本のアドベントキャンドルに火が灯りました。皆様の心にも明るく温かい火が灯りますように。そして、よきおとずれを共に喜び、素敵なクリスマスをお迎えください。