秋に思う
校長 児玉 純
美しい中秋の名月を今年は多くの方が鑑賞されたのではないかと思います。例年ならば、涼しい秋の風を感じながら気持ちよくお団子を頬張るところですが、今年は記録的な猛暑のために、汗を拭きながらのお月見になったのではないでしょうか。大リーグでは、大谷選手が心躍る記録更新を続けましたが、猛暑の記録更新にはこりごりです。
9月に入って、6年生の南三陸スタディツアー、5年生の茨城スタディツアーが行われました。6年生は例年同様に3.11の教訓から防災について考え、南三陸の一次産業について学ぶ3日間でした。5年生は金砂での稲刈り、武藤観光農園でのブドウ狩りを通して、農業について学びました。どちらのスタディツアーも、そこに携わる人から直接話を聞き、直接手で触れて空気を感じることができる、立教女学院ならではの貴重な時間でした。
今回のスタディツアーで私が特に印象に残ったのは、気候変動による一次産業への大きな影響についてです。南三陸では、水温の上昇により特産物のワカメやホヤ等の収穫が減り、漁師さん達が頭を痛めていることや、昔は10月半ばにおこなっていた稲刈りが、最近は9月の上旬・中旬など一ヶ月も早くなってきていること等を聞きました。また、茨城では暑さのためにブドウが収穫できる期間が短くなっているということでした。猛暑の中での稲刈りが想像を超えるほど過酷だったことも忘れられません。このような経験を通して、私も子ども達もここ数年、大きく変わってきている気候への危機感と、自然を相手にしている方達の戸惑い、苦労、工夫などを少しは自分事として捉えられるようになったスタディツアーでした。
幸い、私たちは宿舎の方々の努力もあり、南三陸でも常陸太田でもおいしいご飯を毎回いただき(特に地元産のお米がたいへんおいしかったです。)、森や海の美しさに感動し、頬をなでる風や鼻をくすぐる匂いなど、自然の恵みをたっぷり受け取ることができました。また、そこで生きる人たちの優しさ、いのちに直接触れることができたことは、かけがえのない経験になりました。
気候もようやく一段落しそうな雰囲気です。大きな自然の変化を感じながら、目の前の自然を楽しむ、そんな秋にしたいと思います。また、秋は豊かな収穫の時です。子ども達一人ひとりが豊かな実りを自分自身で実感しながら成長していく、そんな時になることを期待しています。
さて、来週末は運動会が予定されています。「行事が子どもを成長させる」とは、教育界ではよく聞く言葉です。本校にはいくつもの行事がありますが、運動会は全校揃って行う大きな行事です。この行事を通して、子ども達がどんな姿を見せてくれるか、どう成長していくか楽しみです。「スポーツは勝利を目指して全力を出すことが大切だけど、勝つこと以上に、努力することが何倍も大切で価値があります。そして、競技が終わればノーサイドです。」と、いつも子ども達には話しています。子ども達が力一杯躍動する姿、笑顔いっぱい表現する姿に、大きな声援と拍手をお願いいたします。
※皆で祈りましょう
能登では、元旦の地震に続いてまた大きな災害が起きてしまいました。また、能登だけでなく、今年の夏は各地で大雨による災害が起きました。私たちは、「今自分にできること」を考えるときではないでしょうか。「被災された方々に主の慰めと守りがありますように。また、1日も早く日常が戻りますように。」
≪ 6年生スタディツアー 宮城県南三陸町 ≫
今年で10回目になるスタディツアー。今回もたくさんの方にお会いすることができました。
石巻市震災遺構 大川小学校では、語り部の佐藤さんからお話を伺いました。震災は悲しく、失ったものも多かったけれど、だからこそ、これで終わりにしないでほしいという、強い思いを受けとりました。大川小学校の子どもたちが避難した道を早足で歩きながら当時を想像すると、胸がしめつけられました。南三陸311メモリアルでは、日頃から「もしも○○だったらどうしよう」と問い続け、「話し合う」ことが、命を守ることにつながるのだと知りました。
2日目は、漁船で養殖場まで連れて行っていただきました。三陸の海で採れた肉厚なワカメを試食して、海は豊かな命を育んでいることを体感しました。その後、志津川湾にあるビジターセンターで、「雨水は、山の上から森や川、人の住む町を通り海に注がれる。海は、全ての営みを受けとめてくれる。」と、自然はつながりを持っていることを教えていただきました。ビーチクリーンをすると、あっという間に袋がいっぱいになりました。午後は、数種類の海藻の入った「世界に一つだけのふりかけ」を作った後、農業体験へ。地球温暖化が農作物に与える影響についてお話をうかがいました。自分で選んだりんごを丸かじりすると果汁が口から溢れ、普段食べているものを、作ってくださる方について考えるきっかけをいただきました。
3日目、YES工房では、大切な森を守り続けるために、様々な取り組みをされていることがわかりました。
6年生はこの3日間で、世の中にはまだまだ知らないことがたくさんあることに気づくことができ、支えられている命に感謝することができました。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆日記より◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
・防災のために、答えのない問いを問い続けていた方がいることや、海を守るためにビーチクリーンをされている方がいることを知り、どちらも私達が「行動しないとだめ」ということを教えてくれました。
・「大川小学校は、未来を拓く」と言われて、初めは意味がわからなかったけれど、だんだん納得するようになりました。大川小学校で平和な日常を送っていた先生や子どもたちがふみしめていた地面に、私たちが震災から13年経ってもそこに立って、学び続けているからです。
≪ 4年生 プログラミング授業 ≫
株式会社ノジマによるプログラミングの授業を4年生対象に実施しました。
今回は「LEGO education SPIKE」というキットを活用し、街中をイメージしたプレイマットの上でプログラミングしたLEGOの自動車を走らせるということを体験しました。道路の右左折や赤信号の停止時間など、プログラミング通りに自動車が動かない状況に苦戦しながらも、グループのメンバー同士でコミュニケーションをとりながらプログラミングを楽しんでいました。
日本は、超スマート社会の実現に向けて歩みを進めています。数十年後の社会は、現在を生きる私たちの想像を超えた「モノ」が生活の中に溢れていることが予想されます。新しい技術に対する子どもたちの順応力の高さは、今回の授業でも見受けられました。新しい技術と多く出会い、新しい技術の良い部分や足りない部分を考えていく力がこれからは求められていくのではないかと、今回の子どもたちの姿を見て感じました。
≪ 5年生秋のスタディツアー 茨城県常陸太田市金砂郷 ≫
夏の台風の影響で「稲が弱っていないかな」「無事に育っているのかな」とどきどきしながら迎えたスタディツアー。金砂の田んぼを訪れてみると、黄金色の美しい景色があたり一面に広がっていました。夏の暑い時期もずっと見守り、お手入れをしてくださった金砂の方々に感謝をしつつ、初日の稲刈りは、かまで手刈りする人、束ねた稲を運ぶ人、それをおだがけ(竿に稲を干すこと)する人、バインダーでどんどん刈る人に分かれて体験をしました。2日目は、武藤観光農園でブドウ狩りをしました。武藤さんのお話から、最近は手軽さから種無しブドウが人気ですが、ブドウ農家さんにとって種有りブドウを作ることの方がいわば、「職人技」なのだということが分かりました。ブドウ作りに誇りをもっておられる農園の方から、栽培の苦労や工夫などさまざまなお話をうかがいました。自然からいただく「食」の恵みだけではなく、生産者さんの「食」に対する愛情や誇りを感じ、「食」への向き合い方について改めて見つめ直す良い機会になりました。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆日記より◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
・手で稲を刈るのはバインダーとは違い、とても大変で汗もだらだら垂れてきました。昔の人はこんな大変な思いをして毎日がんばっていたんだな、すごいなと思いました。
・今お米不足が問題になっています。いつも食べているお米を大切に、田植えから稲刈りまで大変なことを毎年やってくれている農家の方々のことを思って食べたいと思いました。
・お米は雷がなって育つ!雷は怖いけれど、お米は育つんだ、お米はすごい。
・生き物採集では、珍しい二ホンザリガニを捕まえることができました。ザリガニは赤い色のイメージがありましたが、灰色のザリガニがいることに驚きました。
・ぶどう農園の試食で出てきた「雄宝」の食感は、まるでなしみたいで本当においしかったです。