積み重ねること
校長 児玉 純
立教女学院の魅力の一つは、豊かな自然です。正門、坂下門を通り抜けると外の世界と隔離された豊かな自然が私たちを包んでくれます。2022年度の1学期、子ども達はその豊かな自然に包まれて伸び伸びと学校生活を送ることができました。一方、コロナウイルス、猛暑、豪雨など、その自然に悩まされることもありましたが、本来の立教女学院小学校の姿を取り戻しつつ1学期を終えることができるのは、たいへん感謝なことです。
1学期の大きな行事、軽井沢キャンプをほぼ予定通り終えることができました。前回も書かせていただいたように3年ぶりというのは、私たち教員にとっても今までと違った緊張感のある2泊3日、3泊4日でした。私は幸いにも全11泊のうち、7泊を子ども達と一緒に過ごすことができました。千ヶ滝の女学院のキャンプ場に行けたこともとても幸いでした。みすず山荘とは全く違った雰囲気を子どもたちは感じていました。古いチャペルも、きっと心に残ったのではないかと思います。もっとも、初めて見る子ども達よりも、久々に訪れる教員達のほうが感慨深かったように見えましたが。
私がこのキャンプを通して一番強く感じたことは、「積み重ねの大切さ」です。5年生は、スタディツアーの経験が生かされていて、とても落ち着いた印象を受けました。3年生と6年生が一緒のキャビンで過ごす3日間は、やはり6年生の頼もしさが目を引きました。自分が3年生の時の記憶が、きっとどの6年生にも残っていたのだと思います。とても丁寧に、やさしく3年生と接していました。3年生が、初めての宿泊行事とは思えないほど最後までキャンプを楽しんでいたのは、6年生のおかげです。この記憶が、来年、再来年、そして自分たちが6年生になった時につながっていくのだろうと思います。みんなのために仕事をしたこと、キャビンの仲間と笑ったこと、なかなか寝られず先生に注意されたこと、最後の歌の交歓で涙が止まらなかったこと、すべてのことが子ども達の経験となって積み重なっていきます。
学校では、「行事で子どもは育つ」とよく言われます。行事そのものにも大切な意味はありますが、行事を行うことで子ども達が貴重な経験を積み重ねられるということが大切なのだと思います。この2年間、このような行事を経験させてあげられなかったことがたいへん残念ですが、With Coronaの時代、知恵を絞って工夫しながらたくさんの経験を積み重ねられるよう、今後も努力していきたいと思います。なお、このキャンプができたのは、立教学院みすず山荘のご厚意によるものです。深く感謝いたします。
長い夏休みが始まります。今年はたっぷり楽しめる夏休みになるかと思っていましたが、やはりコロナの影響が大きく覆いかぶさってきました。基本的な感染予防をしっかりと行い、楽しく健康に安全にお過ごしください。神様のみまもりが豊かにありますように。
キャンプ報告
あなたがたは神に愛されている子どもですから、神に倣うものとなりなさい。(エフェソの信徒への手紙5章1節)
3年生のキャンプ目標 キャンプ生活を「たのしみ」ましょう
3年生にとって、初めてのキャンプ。キャンプに行く前の準備では、『たのしむ』とはどういう意味なのかを話し合いました。自分1人だけが楽しいのは本当の意味での楽しいとは違い、キャンプに参加する人みんなが楽しいと感じるようにしたい、ただ楽しむのではなく、周りの人への感謝の気持ちを忘れずに過ごしたいなど、『たのしむ』ことの真意を確認し、キャンプへ向かいました。
キャンプ場での生活の仕方や係の仕事、キャビン紹介、野外炊事、キャンプファイヤーなど、キャンプの楽しみ方を6年生が1から教えてくれて、その姿が3年生にはとてもまぶしく見えたようです。不安な気持ちもあったようですが、本当に6年生に支えられた3日間でした。キャンプ準備が始まった当初はなかなか6年生に話しかけることもできない様子でしたが、準備を進めていく中で、積極的に話せるようになりました。また、分からないことがあったら自分から6年生に質問することもできるようになり、3年生と6年生の関係がぐっと深まったキャンプになりました。6年生にお世話をしてもらうだけでなく、自分自身の頭を働かせて行動をする場面も多く見られ、大変頼もしく感じました。今回のキャンプで経験したことや学んだことを生かして、来年のキャンプは、自分たちで考えて『たのしみ』を発見してほしいと思います。
~日記より~
・キャンプは、何を話せばいいかわからないくらい楽しいことがいっぱいありました。
・6年生がたくさん面倒を見てくれて、困ったときもずっとそばにいてくれました。私も未来の3年生とのキャンプでちゃんと面倒を見られるお姉さんになりたいです。
・初めてのキャンプだったので緊張していたけれど、6年生が大丈夫だよといってくれて、緊張がとけました。
・面倒な仕事も楽しい声をかけるとやる気になれるということを、6年生から学びました。
4年生のキャンプ目標 自分たちで考えて「たのしみ」を発見しましょう
キャンプ場がどんなところかも想像がつかない4年生。「お風呂は何人で入るんだろう?」「先生もいっしょに入るの?」という新鮮な疑問が出てくるほど。たくさん支えていただきながら、できる限り自分たちで考え、キャンプを『たのしむ』ことを大切にして準備を進めました。
いよいよキャンプ当日。バスの中でおやつの飴が配られた時には歓声が上がりました。キャンプ場では、緑の美しさ、風の気持ちよさを感じながら、広いお庭でたっぷり遊びました。キャビンピックやキャンプファイヤーでは、自分たちで考えたプログラムをたのしみました。進める側は分かりやすく伝わるように努力し、参加する側は、聞くことに気をつけ、みんなの協力のもと、大変盛り上がりました。自分たちで考えたことが、「たのしみ」につながっているひとときでした。
ピッキオの野鳥の森では、ヤゴの抜け殻、けもの道、おたまじゃくし、熊のつめあと、オトシブミ、軽石など……たくさんの生き物や自然とふれあい、軽井沢らしさを体験できました。
キャンプの生活は、学校と同様に、朝の礼拝で始まり、お祈りで一日が終わります。礼拝の中で、友だちや先生、自然との何気ないかかわりの中で、神さまと出会えるかもしれないというお話をうかがい、納得。「キャンプってたのしい!」という気持ちがあふれていたこと、健康に安全に過ごせたことも含め、神さまに見守られていることを改めて感じる3日間でした。
~日記より~
・行く前はとてもきんちょうしていましたが、みんなでいるとこんなに楽しいんだなと思いました。
・ちょっぴりはずかしかったけれど、みんなでお風呂に入ったのが楽しかったです。
・ごはんがこげてしまいましたが、やきおにぎりみたいになり、それもまたおいしかったです。
・東京に帰りたいけど、帰りたくない、ふしぎな気もちになりました。
5年生のキャンプ目標 「たのしみ」を創りだしましょう
5年生の目標は「たのしみを創りだしましょう」です。出発前の準備期間は、自分が楽しむのはもちろんのこと、どうすればみんなが楽しめるキャンプになるのかを一人ひとりがよく考えて過ごしました。
そして、あっという間にキャンプスタート!初日の「キャビンピック」や、3日目の「キャンプファイヤー」などのレクリエーションでは、5年生らしく企画から司会までほとんど全てを自分たちで行い、「たのしみを創りだす」ことができました。また、軽井沢ならではの自然体験からも、多くの学びを得ました。ピッキオの森でのナイトハイクは、都会ではなかなか味わうことのできない静寂の中で、真っ暗闇の森の中を歩きます。特殊なライトを当てることで、野生のコウモリが獲物を捕食する姿も観察することができました。
湯ノ丸高原では、特別天然記念物である「レンゲツツジ」の剪定を体験しました。ツツジが群生している森は、放っておくと様々な木や植物も育ってしまいます。そのため、森林を整備する活動が重要であり、今回はそのお仕事を5年生が一緒に体験させてもらいました。
3泊4日を共に過ごせば、子どもたちの間には、時として意見の相違や些細な喧嘩が生じることもあります。ですが、その都度子どもたちは「たのしみを創りだす」ことを思い出し、目的に向かって力を合わせようと努めていました。この経験が、共に生きることの楽しさ、難しさ、そして素晴らしさについて考えるきっかけとなることを願っています。
~日記より~
・「木を切る」というと、私は人工物(建物)を作るためというのが頭に浮かびますが、〝他の植物を守るために木を切ることがある″というのを初めて知りました。
・最初はどうなるかなと思ったけど、最後には心が一つになるような、とっても良いキャビンメンバーになれて、とってもとってもうれしいです。一生の思い出になると思います。
・私が心に残ったことは、最終日にA組とB組で行った「歌の交歓」です。1つ1つの歌詞に心がこもっていました。気持ちって本当にそのまま伝わるんだなと思いました。
6年生のキャンプ目標 「たのしみ」を人に与えましょう
6年生にとって、3年生で行った以来3年ぶりのキャンプです。3年前のしおりやスケッチブックを手がかりに、当時の自分たちの気持ちを思い出しながら準備を進めました。3年生に渡すリーフレット作りでも、3年生になったつもりで考える姿が見られ、6年生として3年生にどんなことができるのかたくさん話し合いを重ねました。
学校での準備、キャンプ場に行くバスの中のバスレクやキャビン紹介を通し3年生との距離がぐっと縮まった1日目を経て、2日目には野外炊事をしました。「3年生の時は、6年生にやり方を教わって野菜を切ったりお皿を並べたりしていただけでしたが、あれから3年経った今、3年生に教えられる6年生になれたことが嬉しかった。」と作文に書くほど、成長を感じたひとときでもありました。自分たちが仕事をこなすだけでなく、野菜を切り終わった3年生と次にできることを考えたり、いっしょに片づけを始めたりと、全体を見ながら上手に分担することができました。どのキャビンもとてもおいしいカレーが完成!自由時間も元気に3年生と外でドッジボールをしたり、広い芝生の斜面をごろごろと転がったりと、自然を存分に感じながら共に楽しんでいました。3年生がのびのびと過ごしている様子や楽しそうな笑顔を見て、行く前はプレッシャーに感じていた「『たのしみ』を人に与えましょう」という目標が達成できているように感じました。
キャンプファイヤーが終わり、あっという間の最終日。3年生の大きく元気な歌声を聞きながら、「お世話をするのは大変なこともあったけれど、とてもやりがいがあった。」「3年生の『楽しかった!』が聞ける度に、キャンプ目標 を達成できたという自信になった。」という思いがそれぞれの胸に残りました。自分たちが与えてもらった『たのしみ』を思い出した、6年生として過ごしたキャンプ生活は、思い出と自信とともに、それぞれの成長を促してくれたようです。