分断を終わらせるために
分断を終わらせるために 教頭 吉田 太郎
第46代アメリカ大統領となるジョー・バイデン氏の就任式がワシントンで行われました。最も印象的だったのは、アマンダ・ゴーマン(Amanda Gorman)という女性のThe Hill We Climb「私たちが登る丘」という詩の朗読でした。
夜が明けるとき、私たちは自分に問いかける。決して終わらないように見える陰の中、一体どこに光があるのかと。私たちは、失ったものを背負い、海を渡らなければならない。
私たちは、窮地に立ち向かい、学んできた。静けさが平和だとは限らないことを。そして「正義」を定義する規範や概念が、必ずしも常に正しいとは限らないことを。それでも、私たちが気づく前に、夜明けはやってくる。
When day comes we ask ourselves, where can we find light in this never-ending shade? The loss we carry, a sea we must wade.
We’ve braved the belly of the beast, we’ve learned that quiet isn’t always peace, and the norms and notions of what just it isn’t always just-ice. And yet the dawn is ours before we knew it.
前大統領の4年間を建国の父たちの困難な航海に喩えるように始まるこの詩は、アメリカという国で起こった民主主義の危機という悲劇に向き合いつつ、それでも「夜明けはやってくる。」と綴ります。
分断を終わらせよう。なぜなら私たちは、未来を第一に考えるから。まずは、それぞれの違いに執着するのをやめなければならない。武器を置いて両手を広げよう。互いの手と手が届くように。
We close the divide because we know, to put our future first, we must first put our differences aside. We lay down our arms so we can reach out our arms to one another.
私たちの世界では、権力や利権をめぐり、あちこちで覇権争いが繰り返され、人や自然が傷つけられ、嘘や欺瞞によって「分断」が深刻化しています。未来を第一に考えるなら、執着することから自由にならなければならないと、海の向こうの声は私たちにも語りかけます。そして、約5分間の感動的な詩の最後はこう締めくくられています。
光はいつもそこにある。私たちに、光を見る勇気があれば。私たちが、光になる勇気があれば。
For there is always light, If only we’re brave enough to see it If only we’re brave enough to be it.
私たちが採用している社会システムとしての民主主義は完全ではありません。しかし、それは失敗ではなく、未完成なのだと考えます。数の力ではなく、小さな声を大切にできる人でありたい。そのために「学校」や「教育」、「信仰」が果たす役割はこれからも重要であり続ける。一人ひとりがそう気づくことができれば、「分断」を終わらせることができるかも知れません。