学校生活

小学校だより

2018/3/1

第227号 2018年1月30日

欠けたる器として    教頭  吉田 太郎

 あれが得意だとか、こんな資格を持っているとか、賞状やトロフィーをいくつ貰った、なんて自慢話よりも、失敗して叱られてしまったことや、ズルをしたら見つかってしまった話、うまくいかなかった経験談の方が子どもたちの反応がすこぶる良好です。年齢を重ねればなおさら、そうかもしれませんが、病気や怪我の話も話題としては盛り上がります。海外旅行の話題でも、どんなに美しい南仏の海の美しさを語るよりも、財布を落としたり、騙されそうになった話の方が興味を惹くのではないでしょうか。とにかく失敗や、うまくいかなかったことを面白おかしく人に話したくなってしまうのです。
 また、聖書の物語を例にすれば、古代イスラエルの人間たちの醜態がこれでもか!と言わんばかりにさらけ出されていることに気づくでしょう。アダムとイヴは神からの約束を破って赤い木の実を食べてしまうし、その息子カインとアベルは最初の殺人事件の犯人と被害者です。創世記や列王記には裏切りや謀略、快楽や堕落といった人間の持つ負の部分が数多く記されています。また、イエス・キリストの生涯を記した福音書にも、イエスと対立するファリサイ派や律法学者の中に、また12人の弟子たちの中に、罪深い人間の姿が描写されているのです。何故か?こう考えると、合点がいきます。私たち人間は罪あるゆえに完璧で絶対的な神を求めるが、私たちは到底、完璧なものではないので、人間と神の歴史や関係性を記そうとすれば、私たちの弱さや足りなさに向き合わざるを得ないのだと。
 しかし、私たちは親になった途端に、我が子の失敗やできなさを許容することが困難になりがちです。ほんの少しでも彼女たちが傷つくことから回避させてやりたいと思いがちではないでしょうか。「失敗から学ぶこと」は大いにあると経験上、誰もが知っているにも関わらず、我が子だけは守ってやりたいと。それが行き過ぎると、子どもは「親を失望させたくない」ということが価値の中心になっていきます。先日の全校保護者会で学力についてお話をさせていただいたせいでしょうか、「うちの子は大丈夫なのだろうか?」「もっとやらせないと!」「もう手遅れ?」などという悩みや心配の声を聞くことが増えました。ご家庭の意識が高まり、子どもの学習環境や学習への意欲が向上することは大歓迎なのですが、一方で親の不安が苛立ちとなり、偏差値や学力、テストの点数、結果ばかりに気を取られ、子どもたちにとって大切なこと「正直さ」「信頼」「愛されていること」を見失ってしまうことを懸念します。何かができたから、良い結果を得ることができたから、素晴らしい。というだけではなく、努力の過程や取り組む姿勢を評価して欲しいと思います。そんなことを考えていると、茨城のり子の次の詩が思い浮かびました。 

「落ちこぼれ」  茨城のり子
 落ちこぼれ  和菓子の名につけたいようなやさしさ。
 落ちこぼれ  今は自嘲や出来損ないの謂い 落ちこぼれないための  ばかばかしくも切ない修行
 落ちこぼれこそ  魅力も風合いも薫るのに 落ちこぼれの実  いっぱい包容できるのが豊かな大地
 それならお前が落ちこぼれろ  はい 女としてはとっくに落ちこぼれ
 落ちこぼれずに、旨げになって  むざむざ食われてなるものか
 落ちこぼれ  結果ではなく 落ちこぼれ  華々しい意思であれ。 

 「落ちこぼれ」という誰もが忌避する言葉を、まるで和菓子のようにと、転換する豊かさ。完璧であることを目指したり、無傷であることに拘るよりも、どこか一片の欠けがある人間の方が自由で美しく、魅力的なんじゃないのかなと感じます。何故ならそれこそが、神がご自分に似せて創造した人間なのだから。

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≪4・5年生はじめての席書会
 
書き初めは皆様ご存知の通り、古来日本で行われてきたお正月の伝統行事です。江戸時代から庶民にも広がり、人々はおめでたい言葉やその年の目標などを書いて、字の上達や、その一年がうまくいくことを願ってきました。
 本校では、この伝統行事の体験を皆で共有し、文化を継承する心をより一層深めることを目的として、今年初めて4・5年生の席書会を行いました。体育館にブルーシートと新聞紙を広げ、静かで独特の緊張感漂う中、子どもたちは真剣な表情で清書に取り組みました。この日のためにたくさん練習を重ねてきた子どもたち。納得のいく作品を仕上げられた子もそうでなかった子も、この経験を通してそれぞれに成長し、次の世代に伝統を伝える種を自分の心に植えられたことと思います。
 この書き初め作品は、2月12日(月)まで校内展示されております。ぜひ足をお運びいただき、子どもたちの努力の結晶をご覧ください。習字 堀口美智子)
(日記より)
・今までで一番上手な作品になりました。「冬休みからけっこう上達したな。」と思いました。(4年)
・一画目、上手に書けました。二画目、失敗!でも先生が「最後まであきらめない。」と言っていた言葉が頭の中に入って最後までていねいに書きました。(4年)

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≪小さなコンサート
 
1月29日(月)の5校時目に、聖マリア礼拝堂で小さなコンサートを開きました。お招きしたのは、ドイツ在住のバイオリニスト、斎藤アンジュ玉藻さんです。バッハの演奏に定評があり、ザルツブルグをはじめ、ヨーロッパ各地でご活躍されている方です。今回は礼拝堂にふさわしいバッハの曲を2曲と、超絶技巧の情熱的な「カルメン幻想曲」、日本の「浜辺の歌」を演奏してくださいました。
 「文字を持たない時代から音楽はありました。音楽は古くから、人々の暮らしに必要なものだったのです。浜辺の歌を聞いて、涙を流す外国人がいます。音楽は言葉や文化を越えて、人と人とが通じ合えるものなのです。」~玉藻さんのおはなしより~  (音楽科 上川)

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6年社会科 総理大臣官邸・公邸特別見学
 6年生の中から希望者を募り、総理大臣官邸・公邸の特別見学に参加しました。国政にかかわる重要な場を直接目にし、感じ取ることのできる、またとない機会です。この特別見学は各学校からの希望が大変多いため、抽選や人数制限があるなど、参加までの道のりにちょっとした険しさがあります。
 2002年から使われ始めた官邸は、毎週の閣議の他、重要な政策会議などが行われる場です。広々としたエントランスホールは、首相がインタビューを受ける場所の一つとしてよくニュースで目にします。内閣発足の記念撮影も行う階段に並んで、「ここがあの場なんだ!」と感激していました。晩餐会や式典が行われるホールでは、日本らしさの中にある華やいだ雰囲気に身を委ねました。会議室で大臣席に座ってみたり、記者会見室では演台に一人で立ってみたりと、貴重な経験をすることもできました。隣に位置する総理大臣公邸では、歴史を重ねた建物の意匠や、重厚な雰囲気をじっくりと味わいました。係の方々の丁寧な説明や、細やかな心配りに支えられ、子どもたちの関心もますます深まり、意義深いひと時となりました。
 この経験を生かし、社会を見つめる子どもたちの視野がいっそう広がることを期待しています。(社会科 土谷)

 

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